頻尿、尿もれのトラブルにつながる「骨盤底筋」を鍛える!

2020.08.03
頻尿、尿もれのトラブルにつながる「骨盤底筋」を鍛える!

骨盤底筋は、加齢や運動不足、妊娠・出産でも衰えます。特に更年期以降は、頻尿、尿もれ、性交痛、骨盤臓器脱だけでなく、全身のさまざまなトラブルの原因につながります。人生100年時代、健康に快適に生きるには、女性にとってケアすべき重要な場所です。

骨盤底筋の衰えから起こるトラブルとその対策をお届けします。

文/増田美加(女性医療ジャーナリスト)

 

骨盤底は尿もれを回避し、快適な人生を送るためのカギ

骨盤底筋は、骨盤のいちばん底にあって、子宮や下半身の臓器を支える筋肉やじん帯の総称です。

骨盤底は、坐骨結節の間に張っています。意識しづらい場所ですが、坐骨結節を確認するには、椅子に座って、てのひらを上にしてお尻の下に置くと指が触れる、硬い骨の出っ張りです。

肛門や腟を意識して“締める→緩める”を繰り返すことで骨盤底は鍛えられます。

 

骨盤底筋が衰えるとどうなる?

骨盤の歪み、下腹がポッコリ出るなどのボディラインの崩れだけでなく、腟の緩み、萎縮、頻尿、尿もれ、下腹部痛、性交痛、骨盤臓器脱(子宮脱)などを起こす危険が高まり、それによって、うつ病リスクも高まると言われています。

骨盤底筋の衰えは、更年期以降の人生のQOLを著しく低下させます。

骨盤底筋は、骨盤の底にあり、恥骨、坐骨結節、尾骨についている筋肉で、骨盤内の臓器である膀胱や子宮、直腸を支える役割があります。

もうひとつの役割は、排泄のコントロールです。骨盤底筋は、便意や尿意があると緩み、排泄します。

ところが、過剰な負荷がかかり、締める力が低下すると、尿もれや頻尿、骨盤臓器脱(腟から臓器が出てくる症状。膀胱が出る膀胱瘤、子宮が出る子宮脱、直腸が出る直腸瘤など)の原因にもなってしまいます。

出産によって、骨盤底筋や靭帯、筋膜が伸び、断裂することでも起こりますが、いったん治まっても、再び更年期に女性ホルモンの低下や加齢による筋肉の衰えが原因で再燃します。

骨盤底筋は、手足と同じように、鍛えれば筋力はアップし、何もしなければ衰える骨格筋です。普段意識しないでいると、手足の筋肉より衰えるのが早いのが特徴です。

骨盤底筋を緩めることができず、セックスができなくなる人もいます。肩こりと同じで、筋肉が緊張していると血流が悪くなり、痛みを起こす発痛物質が滞るため、痛みが出てくる場合もあります。

骨盤底筋の衰えのピークは、エストロゲンの分泌が減る閉経後です。

 

「GSM」を引き起こすことも。予防とケアが重要

頻尿、尿もれ、性交痛は婦人科へ

すでに、頻尿、尿もれ、性交痛、腟萎縮で困っている人は、女性泌尿器科や婦人科で相談しましょう。

軽い尿もれや頻尿の症状であれば、薬を使わず、骨盤底筋トレーニングで80%改善するというエビデンス(科学的根拠)があります。症状がなくても、早い段階からトレーニングを習慣化することで予防になります。

また、外陰部、腟のかゆみ、尿もれ、性交痛があればGSM(閉経後性器尿路症候群)かもしれません。GSMは閉経後、女性ホルモンの低下に伴う外陰部、腟の萎縮と不快な症状で、泌尿生殖器症状が顕著に起こります。

以前は、老人性腟炎と呼ばれ、年だから仕方ないと放置されていました。しかし2014年、国際女性性機能学会と米国更年期学会が新たな疾患概念を提唱しました。

それによって、GSMはゆっくり確実に進行し、閉経後の半数以上の女性の生活の質が低下していることが明らかになったのです。

 

「GSM」の3大症状は、外陰部、腟のかゆみ、性交痛

GSM(閉経後性器尿路症候群)の症状は、腟乾燥感、腟・外陰部の灼熱感、かゆみ、尿失禁、頻尿、尿意切迫感、排尿困難感、性交時の潤い不足、性交痛、性的欲求低下、オーガズム低下など多岐。兆候となる3大症状は、外陰部、腟のかゆみ、尿もれ、性交痛です。

GSMの治療の第一選択肢は、ホルモン補充療法(HRT)と言われています。ホルモン補充療法(HRT)は、保険適応薬で、飲み薬、貼り薬、塗り薬と種類も豊富です。

けれども、全身へのホルモン補充療法(HRT)は、

①乳がんや子宮がん、血栓症などの既往があると処方できない

②充分に症状が改善しない人が多い

③60歳以上の女性には血栓などの動脈硬化のリスクがあり、処方しにくいという問題もあります。

そのため、局所治療でエストロゲンの腟剤が使われることが多いのです。

ホルモン補充療法(HRT)やエストロゲン腟錠で改善しない人には、炭酸ガスフラクショナル(CO2)レーザーによる腟・外陰照射治療も婦人科、女性泌尿器科を中心に行われています。GSM症状を改善し、デリケートゾーンの若返りをめざす治療です。

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骨盤底筋のケアのポイントは?

骨盤底筋群を意識せずに腹筋を鍛えている人、便秘がちでトイレでいきむ人、アレルギーやぜんそくがあり、連続的に咳やくしゃみをする人は、年齢に関係なく骨盤底筋に負担がかかっている可能性があります。

女性は、過剰に腹圧をかける動作は厳禁です。蓋のあいたチューブタイプのマヨネーズに圧をかけると、中身が出てきます。それと同様で、腹筋を鍛えるときに、骨盤底筋という蓋をつくらないと、中身(子宮、膀胱、腸)が出てきてしまうのです。

土台である骨盤底筋が弱いと、膀胱が安定しないため頻尿になる人もいます。原因は骨盤底筋の緩みだけではないと言われています。

緊張すると、何度もトイレに行きたくなるように、膀胱は自律神経が支配しているため、心因性の場合もあります。

尿意を感じると、すぐトイレに行き、2時間もたない人は、膀胱が小さくなり、尿を溜められなくなります。

トイレに行く回数は意図的に減らして、膀胱に尿を溜めるトレーニングを行うといいと言われています(トイレの回数は、24時間で4〜7回が正常)。膀胱トレーニングは、女性泌尿器科で指導してくれます。

 

骨盤底筋トレーニングを成功させるコツ

骨盤底筋トレーニングは、骨盤底筋だけを動かすことが最大のポイントです。意識しづらいこともあって、脚やお腹などのアウターの筋肉を使っている人も少なくありません。

骨盤が後ろに傾いていると、骨盤底筋は動きにくい特性があります。ですから、骨盤を立てることが大事。そのうえで、背中と腰をまっすぐ伸ばし、左右の坐骨を感じながら椅子に座ります。

その姿勢で、腟と肛門をグーっと引き込みます。それをキープして3秒。そのあと、圧をかけずにゆっくり緩めます。これを2〜3セット、1日3〜5回、行ってみてください。

圧をかけたあと、緩めたときに、骨盤底筋が座面にフワーっとつく感覚が大事です。

トイレに行きたいと思ったら、我慢できず漏れてしまう「過活動膀胱」の人や「頻尿」がある人は、腹圧をかけておしっこをする傾向があります。締めるときだけでなく、緩めるときもゆっくり行うことを練習してみましょう。

 

骨盤底筋の締まりを意識できない人は…

骨盤底筋が締まっているのかどうかわからないという人もいます。その場合は、丸めたタオルを恥骨から肛門にあてて、椅子に座ります。そして、タオルをつかみとるようなイメージで腟と肛門を中にグーっと引き込みます。

タオルが骨盤底筋にあたるため、締める、緩める、の感覚がつかみやすいはず。

また、尾骨、あるいは腹横筋(骨盤の内側2〜3cmの部位)を指で触りながら行ってみてください。

尾骨や腹横筋がわずかに動くのがわかれば、骨盤底筋は動いている証拠です。

それでもわからない人は、お風呂のときなどに、指を腟に入れて行ってみましょう。腟が締まると、指が内側に引き込まれるので、感覚がつかみやすいです。

どうしても自分でうまくできないときは、女性泌尿器科や婦人科で骨盤底トレーニングなどの運動療法を専門家に教わることもできます。

 

骨盤底トレーニングには、呼吸が大事

骨盤底筋トレーニングには呼吸が大事

骨盤底筋トレーニングは、呼吸も大事です。息を吐くと横隔膜が上がり、同時に骨盤底筋も上がります。

骨盤底筋の動きは、横隔膜と連動しています。締めるときは、息を吐きながら行います。

くしゃみや咳をしたときに、お腹が出る人は、尿が漏れるわけですから、息を吐いたときに、反射的に骨盤底筋がキュッと締まるクセがつけばいいのです。

この連動がうまくできない人が多いのですが、練習を続ければできるようになります。

重い荷物を持ち上げるときも要注意です。無防備に持ち上げず、骨盤底筋を締めながら行いましょう。

骨盤底の筋トレですから、動かす感覚をつかんだら、あとは継続あるのみ。骨盤底筋トレーニングは、いつでもどこでもできるので、どんな筋トレよりも習慣にしやすいです。

骨盤底の予防と対策には、粘膜ケアも大切です。美容オイルやクリームなどを腟、外陰部の皮膚や粘膜に使うケアもあります。

頻尿、尿もれ、性交痛対策には、骨盤底筋トレーニングに加えて、腟や外陰部の乾燥を防ぐために、保湿ケアをすることも必要です。

骨盤底のケアは、尿もれを回避して、快適な人生を送るための基本です。

 

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増田 美加 Mika Masuda

http://office-mikamasuda.com/

エビデンスに基づいた健康情報&患者視点に立った医療情報について執筆、講演を行う。女性誌『婦人画報』『GINGER』『美的』ほか、女性WEBマガジン『MY LOHAS』『Web GINGER』『女子カレLOVABLE』『@cosme A-beauty』ほかでヘルスケアや女性医療の連載を行う。テレビ、ラジオにも出演。乳がんサバイバーでもあり、がんやがん検診の啓発活動を行う。著書に『医者に手抜きされて死なないための 患者力』(講談社)、『女性ホルモンパワー』(だいわ文庫)ほか多数。

NPO法人「みんなの漢方®」理事長、NPO法人「乳がん画像診断ネットワーク(BCIN)」副理事長、NPO法人「女性医療ネットワーク」理事、「マンマチアー委員会 ~乳房の健康を応援する会」主宰、「日本女性ウェルビーイング学会」副代表、一般社団法人「ウイメンズヘルスリテラシー協会」理事、NPO法人日本医学ジャーナリスト協会会員