【生理について話そう】アイドルに心身ともに健康でいてほしいから、これだけは伝えたい。振付師・竹中夏海さん

2021.11.19 | インテグロ編集部

振付師 竹中夏海さん「アイドル保健体育」という本を出版した竹中さんは、アイドルダンスの振付師。彼女の元には、たくさんのアイドルから体の相談が寄せられていました。自分の立場だからこそ「アイドルの心と体の健康の大切さ」を伝えられると執筆した本には、女性だけでなく男性にも知ってもらいたい女性の身体と心についての知識が詰め込まれています。アイドルやダンサーの生理事情の大変さ、ステージに立つ女の子たちが抱える不安。吸収型サニタリーショーツや月経カップは便利なだけでなく、その不安をも受け止めるアイテムになりえるそうです。

愛用中の商品:エヴァカップ サイズ2、エヴァウェア

 

Her Lifestyle

アイドルの振付師になった経緯を教えてください。アイドル振付師 竹中夏海さん
4〜5歳くらいのときに町のバレエ教室に通い始めたのですが、そのころから先生側の仕事がしたいなと思っていました。モダンバレエだったので発表会ではミュージカルを題材とした演目があり、配役がありました。今振り返ると、役の発表はアイドルの「選抜発表」のようなものだったし、役のグループ分けもユニットグループのようだったと思います。そういうことにワクワクして「作る側」に憧れたんです。

中学生のときにはすでに「振付師になりたい」と思っていました。ただ、どのダンスのジャンルがいいのかはわかっていなくて、大学でいろんなジャンルを学べば自分にフィットするものが見つかるかもしれないとダンス学科に進学。でも、結果から言うと、自分に合ったジャンルは見つかりませんでした。自分に合っているのが「アイドルのダンス」であることに気づいたのは卒業後でした。

 

アイドルのダンスと他のダンスの違いは何ですか?

アイドルのダンスは、一人ひとりのパーソナルな部分を活かせます。そして、ファンの人たちが客席で一緒に踊る文化もあり、その子に合わせた踊りを楽しんでくれます。私は、全員がビシッと完璧にそろっているダンスよりも、同じ振り付けでもキャラクターによって解釈を変えながら構成していくのがとても好きです。私がやりたいこと、全て入っているのがアイドルのダンスなんです。

通常、振付師の先生にアシスタントとしてついてから独立、という場合が多いのですが、私はこれからスタートするアイドルグループの事務局に連絡を取り、振り付けをさせてもらえないかと売り込んだんです。そこから振付師として活動するようになりました。

 

なぜ、「アイドル保健体育」という本を出そうと思ったのですか?

アイドル保健体育 竹中夏海

↑竹中夏海さんの著書「アイドル保健体育

私はとにかく、アイドルに心も体も健康でいてほしいんです。ここ10年で、アイドルはグループによるパフォーマンスと、ストイックライブブームによって、アイドル史上「もっとも踊る時代」になったんです。アイドルたちの運動量はアスリート並みだと言われています。でも、全く身体のケアが足りていないのが現状です。

アイドルたちは身体的にもハードなうえに、ストレスも抱えるような雰囲気になっていたりします。私はアイドルたちを取り巻く環境を見ていて、もっとアイドルたちが健全な形で活動するべきだと思っていました。そのことをどうやったら伝えられるのかと考えていたんです。そこで、振付師の私だからこそ耳を傾けてもらえる、説得力があるのは、身体のことだろうと思ったんです。

健康な体と心は相関関係にあるので、どちらも成立してないといけないですよね。この本では生理のこと、身体づくりのこと、精神的なケア、そして性教育について、それぞれの専門家に話を聞きながら紹介しています。若い女の子たちは自分の身体について知らない場合が多いです。でも、知ることで、自分でリスク管理できたり、適切に助けやサポートを求めたりできると思うんです。

アイドルに向けた本ですが、運営側のみなさんにもぜひ読んでもらいたい。また、「推しの健康を願う」ことをきっかけに、ファンの男性にも手にとってもらえたらいいなと思いました。女性の心身の健康という観点からも、アイドルに限らず男女とも知っておいてほしい大切な情報だと思っています。

 

Her Period

本の最初の章は「アイドルと生理」がテーマですね。

アイドルたちは、いつもステージで同じように元気な姿を見せてくれますよね。でも、もちろん、生理のときもあるわけです。ライブは2〜3時間連続で、トイレに行く暇もない子もいます。早着替えなんかもありますし。そして、下着、スパッツの上に見せパン(白いものが多い)、そしてスカートと、何重にも重ね着をしていてるので生理時はさらにモコモコになってしまいます。それでも、経血がモレないか不安を抱えてステージに向かう子たちがたくさんいるんです。

ライブをした後に、すぐに握手会となる場合がとても多いのですが、生理時のライブ後に崩れるように倒れて「握手会に行けない」と泣きながら訴える子がいたり。水着で撮影をする朝に生理が来てしまって、「どうしたらいいかわからない。タンポンをするのも怖い」と泣かれてしまったと男性マネージャーから電話がかかってきたこともあります。女の子に電話越しでなんとかタンポンの使い方を教えましたが、本当はそばにいてあげたかった。私でなくても、そういうことをわかっている他のスタッフさんが「大丈夫だよ」と言ってあげるだけでも違うだろうなと思っていました。なので、まず生理についての知識がとても必要だと思ったんです。

 

アイドルたちから、どんな質問をされますか?

私自身が生理痛が重めだったのでピルを飲んでいたんですね。それを教え子たちにも伝えると、次から次にいろんな子たちから、なかには私の教え子でない子からも、ピルについて聞かれることが増えました。これだけ私に聞いてくるということは、聞ける人が私くらいしかいないということなんです。

その子たちのお母さん世代はピルに対してのイメージが良くない人がまだまだ多く、「妊娠しにくくなるからやめなさい」とか、避妊薬というイメージが強いからか「あなたの私生活大丈夫?」と違う心配をされたり。その心配の前に避妊すること自体はまず女性が主体的に避妊すること自体はなんら悪いことはないのですが、間違った情報や偏見に近いピルの捉え方をされているんです。

私は専門家ではないので、「まず、婦人科へ相談に行ってごらん。ピルは悪者ではないよ」と伝えていますが、正しい知識をもった大人もまわりにあまりいないということを実感しました。

 

月経カップや吸収型サニタリーショーツをすすめることもありますか?

あります。まず、私が自分で使ってみて、いいなと思ったものはおすすめしています。最初は吸収型サニタリーショーツからトライしてみました。生理中、絶対に漏れないようにと、モコモコに重ね着しているアイドルの生理事情を考えると改善対策になるかもしれないと思って。

私自身は、経血量がとても多いので、吸収型サニタリーショーツは生理期間の初めと終わりごろに使うのがちょうどいい感じでした。とても便利なのですが、これとは別に多い日の対策が必要だなと思ったときに、月経カップを知ったんです。それで試してみました。

アイドル保健体育

↑竹中夏海さんの著書「アイドル保健体育」の裏表紙

私はいつも月経カップは「生理用品のコンタクトレンズ」と言っておすすめしています。体験するまでは、「こんなもの入る?」と思いますが、慣れてしまうと本当に便利で、楽です。ステージがあるときは何時間もトイレに行けないアイドルやダンサーたちにぴったりだと思います。これと吸収型サニタリーショーツを組み合わせたら心強いのではないかと思いました。

 

月経カップをご自身で使ってみていかがでしたか?

最初はやわらかめの月経カップを使いました。そのときは入れ方に慣れていなかったこともあってちょっとモレがありました。最初は無感覚ゾーンまで入れるのが怖かったんです。常に吸収型サニタリーショーツと併用していました。

妊娠・出産してから気づいたのですが、私は骨盤底筋が強いようです。そして、ダンスをやっていて体幹の筋肉もあります。そういう人の場合、少しかための方がいいと聞きましたので、「エヴァカップ」に変えてみたんです。そしたら、ピタッとした感じがして、入れた後にカップが開いたのもよくわかりました。

それぞれブランドごとに少しずつ違うので、自分に合うカップを見つけるまで諦めないでトライしてみるといいですよね。一つのタイプで試してみて「月経カップは合わないかも」と判断しないで、自分で見つけていくのがいいなと思いました。

 

吸収型サニタリーショーツはどんなものを使っていますか?

私はコットンぽいものより、レオタードの生地のようにやわらかくてストレッチが効いて、動きやすい、踊りやすいものが好きなんです。なので、「エヴァウェア」がお気に入りです。すごく伸びて、どこか皮膚っぽいテクスチャーですよね。

そして、これは産後にも活躍してくれました。出産後、子宮から「悪露」という出血が数週間ほど続くのですが、数日間多めの出血があった後は出血量が少なくなるので、エヴァウェアを履いていました。妊娠中・出産後はホルモンの影響で骨盤が広がると言われていますよね。実際、私も想像以上に腰回りが大きくなっていて、他のショーツはことごとく履けなくなっていましたが、エヴァウェアはストレッチが効くので履けたんです。これはうれしかったですね。

 

Her Dream

今後の夢や目標を教えてください。
生理について話そう 竹中夏海さん模索中ではあるのですが、アイドル専用のジムを作りたいなと思っています。ダンスの基礎練習はもちろん、心の健康についても教えられたり、カウンセリングできたりなどもできる場所です。さらに、喉を痛めない歌い方のボイストレーニングができたり。

アイドルは、顔バレ、名前バレが不安で行けない場所があるんです。ダンスレッスンに行きたくても、記録用に撮る練習動画が流出してしまわないかとか。実は婦人科も行きづらいところの一つで、名前でなく番号で呼ぶ婦人科にわざわざ足を運んだりもしているようです。
アイドルが安心して体と心に向き合える場所を作れたらいいなと思って、有酸素運動のダンスインストラクターの資格をとってみたり、健康づくりに関わる検定にもチャレンジしています。

さらにいうと、元アイドルのジムインストラクターやヨガの先生、ボイストレーニングの先生、カウンセラーなどがいるので、そういった人たちの活躍の場にもなってほしいです。現役の子たちの体と心の健康もケアしつつ、アイドルたちのセカンドキャリアを育める場所になるといいなと思っています。

 

プロフィール

振付師 竹中夏海(たけなかなつみ)さん

埼玉県出身。2007年日本女子体育大学ダンス学科卒業。2009年より振付師として活動。HKT48、NGT48などの大型グループから、私立恵比寿中学、アップアップガールズ(仮)など実力派のライブアイドルまで、担当したアイドルは300人に及ぶ。ほかにも藤井隆やテレビ東京『ゴッドタン』内「マジ歌選手権」のヒム子(バナナマン 日村勇紀)など、性別や年齢、ジャンルを問わず踊り手のアイドル性を引き出す“全方位型”振付師として定評がある。また、広告やTV、MVの振付・ポージングも多く手掛ける。自身のアイドル愛にあふれる視点や女性の健康問題を扱う連載も数多くもつ。著書に『アイドル保健体育』(CDジャーナルムック)、『IDOL DANCE!!!~歌って踊るカワイイ女の子がいる限り、世界は楽しい~』(ポット出版)など。